第一回シナリオ研究・最先端研究グループ合同研究会

日時:平成21年3月11日(水)10:00−14:30

場所:工学部2号館335号室

 

出席者(敬称略、順不同)

西川禕一、森井孝、石原慶一、手塚哲央、小西哲之、中島健、大垣英明、小瀧努、佐川尚、作花哲夫、日比野光宏、 深見一弘、福田将虎、園部太郎、張奇、Nuki Agya Uthama

 

1.      先進原子力エネルギー研究(中島教授)

@     未来技術としての原子力(小西教授)

A     CO2ゼロエミッションの定義の再確認が必要(中島教授)

CO2を削減に資する技術・手法であればその範疇に含まれる。Sustainabilityに資するコンセプトと同義では(小西教授)

B     海水ウラン回収の現状は?(西川諮問委員長)

→東京大学が青森陸奥湾沖において研究をおこなっていたが、陸上生産コストの約5〜10倍必要であるため、現在は産業化する計画はない。また、高速増殖炉計画とのバッティングが懸念されるため政策的に実施される可能性は低い。原子力エネルギーは国の政策の影響が大きい(中嶋教授、小西教授)

C     発展途上国での原子力普及計画の進展を受けて、アジアにおける人材育成が必要である(西川諮問委員長)

G-COEプログラム内で原子力実務者の育成は焦点をあてていないが、他プログラムで実施しているように、原子力教育は重要である。(中島教授)

G-COEにはSEEフォーラム、アジアコアプログラム等のネットワークがあり、人材育成は可能である。つまり、国際シンポジウム、ワークショップ当を通じて情報交換、教育を実施し、それを成果報告とする(小西教授)

D     他大学との住み分け

→東大:原子力実務者の育成(原子力施設の現場で活躍する人材)

 京大:原子力の政策担当者

   厳密に区別できない。両方を兼ね備えた人材を育成(西川諮問委員長)

 

2.      バイオマスエネルギー研究(小瀧准教授)

@     バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルに資する

A     G-COE重点技術

超臨界技術によるバイオマス一次処理

遺伝子組換による効率的な五炭糖の発酵

熱分解、イオン液体によるバイオリファイナリー

B     バイオマスの資源量・種と輸送の問題(西川諮問委員長)

→バイオマス利用の制度設計が重要であり、資源確保の面で国際連携が重要である。

C     バイオマスを燃料とした発電と、バイオ燃料に変換して利用する場合、コストの面でどちらが有効か(西川諮問委員長)

→バイオマス利用全体のシステム評価が必要である(手塚教授)

→バイオリファイナリー:グルコースベースで化石資源にかわる炭素源の確保。太陽光(原子力エネルギーを含むクリーンエネルギー)を利用したバイオマス変換として、エネルギーと物質を合わせたコンセプトが必要である(森井教授、小西教授)

D     輸送に関わるコストの問題はどうするか?

→廃材の利用など、原料費がマイナス価格である物が活用されている(小瀧准教授)

 

3.      太陽光エネルギー研究(森井教授、佐川准教授、大垣教授、日比野准教授、作花准教授)

@     太陽光エネルギー利用:電気的なエネルギーとして利用する方法(太陽電池)、化学的なエネルギーとして利用する方法(人工光合成)

A     高効率太陽電池(有機・無期ハイブリッド、量子ドット、熱電変換素子)

B     高効率化を目指すには太陽電池の構造が複雑化し、コストがUPするのではないか(西川諮問委員長)

→製造技術を開発することにより、コスト削減努力を進めている。ドイツのように、国の制度的なサポートが必要である。(佐川准教授)

C     物質変換(人工光合成)は何故これまで成功してこなかったか(西川諮問委員長)

→太陽光エネルギーを吸収し、電荷分離までは成功しているが、その先で電子とホールをなんらかの化学反応に用いることができていない。昨今の遺伝子組換技術の発展により技術的には可能性が高い。(森井教授)

D     グルコースベースのバイオリファイナリー(人工光合成システム)の構築(森井教授)

E     バイオ太陽電池研究はチャレンジングな課題(森井教授)

F     蓄電(高速充放電特性の付与、容量特性の向上技術が課題)(日比野准教授)

G     一室式燃料電池(燃料ガスの選択が不要で、バイオガスの利用が可能)

H     高効率Si製造技術(萩原教授)

I     光エネルギー・機能評価:有効な界面の製造と評価、触媒性の付与(作花准教授)

J     KUFELの多波長化(中嶋准教授)

 

1.      シナリオ策定研究(石原教授、小西教授、手塚教授、張研究員)

@     Webによる資料、データ、イメージの共有が必要。既存のシナリオモデルを分析し、それらを参考にして独自のシナリオモデルの提案(エネルギー指標を導入)(張研究員)

A     独自のモデルの最適化はどのようにするか(西川諮問委員長)

→コスト最小化はその手段であるが、それは目的関数の一つであり、総合的な評価には目的関数を変えてシナリオを策定することが必要。よって、その結果得られるシナリオをG-COEグループで検証を行うために、上述@のようにWebによる情報共有を実施することが重要である。(張研究員)

B     エネルギー技術ロードマップの策定:国の既存のエネルギー技術ロードマップには、G-COE最先端研究でカバーできていない技術が多い。これらの分析はシナリオグループがデータ調査を行う(石原教授)

C     エネルギー技術ロードマップ策定には、最先端研究から具体的な数値目標が必要(例:効率50%、年間1.5 t など)。これらの数値は、最先端研究クラスタ−の研究と併せて議論する必要がある。更に、それらは科学的に根拠ある説明が必要(定量化)(石原教授)

D     最先端研究の定量評価を如何にするか?災害など不確定なパラメーターはどう定量化するか?(西川諮問委員長)

→原子力発電所などの場合は稼働率などで定量化する。コスト面で、原子力は集中型の大型原子力の方が発電コストは安い(石原教授、小西教授)

E     シナリオでコスト最小とCO2ゼロエミッションはイコールにならないが、シナリオ策定にはいずれにしろコストに関するデータが必要(願望曲線で可)。(小西教授)

F     グローバルサスティナビリティに対してのエネルギー

G     既存のシナリオモデルにはこれから開発される技術はデータが無いため計算に入っていない。シミュレーションを行うためには最先端研究クラスタ−からは其々、コスト vs 年の願望曲線の提供が必要。太陽光グループ:コスト、効率、設置場所、原子力グループ:燃料サイクル、稼動率。

H     京大G-COEのシナリオでは、現在入っていない技術(夢の技術)を入れてCO2ゼロエミッションシナリオを策定

I     技術の周囲で制約する条件を出す:サプライチェーンマネジメント。(市場規模、グローバル市場、外部性(コストに入らない))。G-COEでは、これまでに無いシナリオ策定の考え方を提示する