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最先端研究クラスタ 2008年度成果

エネルギー社会・経済研究グループ

(1)生産・消費・廃棄サイクルを通じたエネルギー効率の根本的改善策の検討

(経済研究所)一方井誠治

平成20年度の実施計画
生産・消費・廃棄サイクルを通じたエネルギー効率の根本的改善策を予備的に検討した。

成果の概要

研究一年目の予備的な検討のため,財団法人「日本エネルギー経済研究所」に委託し,「『資源・エネルギーの根本的効率改善可能性』に関する調査」として,[1]エネルギー効率の改善可能性概念についての既存調査研究の整理,[2]一連のシステム改善によるエネルギー効率改善可能性研究の事例調査,[3]効率性改善の障壁とその改善についての事例調査,の3つの分野についてとりまとめを行った。

成果

[1]エネルギー効率の改善可能性概念についての既存調査研究の整理
ここでは,既存研究を取りまとめた文献として,1)「第一次地球革命」(ローマクラブリポート),アレキサンダー・キング,ベルトラン・シュナイダー著,田草川弘訳,朝日新聞出版,1992年刊,2)「ファクター10(エコ革命を実現する)F.シュミット・ブレーク著,佐々木建訳,シュプリンガー・フェアクラーク東京株式会社,1997年刊,3」「ファクター4」(豊かさ2倍に,資源消費を半分に),エルンスト・U,フォン・ハイゼッカー,エイモリ・ロビンス,L・ハンター・ロビンス著,佐々木建訳,(財)省エネルギーセンター,1998年刊,4)「自然資本の経済」(ナチュラル・キャピタリズム),ポール・ホーケン,エイモリー・ロビンス,ハンター・ロビンス著,佐和隆光監訳,日本経済新聞社,1999年刊,5)「日本低炭素社会のシナリオ」西岡秀三編著,日刊工業新聞社,2008年刊,を取り上げ,その概要を整理しつつ,エネルギー効率の改善可能性概念の観点からその評価を試みた。また,これらの著作も参考としつつ,1)内外の環境会計制度,2)ライフスタイルとエネルギー利用効率,3)最終用途(エンドユース)重視アプローチ,などについてこれまでの研究の進展状況についてとりまとめを行った。

[2]一連のシステム改善によるエネルギー効率性改善可能性研究の事例調査
ここでは,資源・エネルギーに関して生じる輸送,食糧供給,照明・給湯,サービスなどの人間の様々な活動に関する効率化や,代替手段の効率化比較などにかかわる研究の事例調査を行った。具体的には,1)エコリュックサック,2)フードマイレッジ,3)ウッドマイレッジ,3)エコロジカルフットプリントなどの手法についてその概要をとりまとめ,資源・エネルギーの効率化を捉えるための手法や指標について検討した。また,気候変動問題に対処するための温室効果ガスの大幅削減に関し,エネルギー生産性の飛躍的上昇についてコスト面からの分析を踏まえ2008年6月にマッキンゼイ社が発表した「炭素生産性」の概念と計算手法等ついてとりあげた。さらに,日常生活における各種代替行為間のエネルギー消費比較について,「手を乾かす方法」,「FAXか郵便か」,「電子レンジかガスレンジか」,「お湯の沸かし方」,「電子メールのエネルギー消費」などについて既存の研究の概要をとりまとめた。

[3]「効率性改善の障壁とその改善」についての事例調査
ここでは,「ネガワット」(発想の転換から生まれる次世代エネルギー),ペーター・ヘニッケ,ディーター・ザイフリート著,朴勝俊訳,(財)省エネルギーセンター,2001年刊を取り上げ,省エネルギーに要するコストが供給増大を図るコストよりも小さい例があるのにもかかわらず人々の考え方がなかなか変化しないために最小コスト計画が支持されなかった例を紹介し,その経験から「効率革命」を実現するための条件を示した。また,省エネルギー技術を新たなエネルギー導入と同じ場面で評価する方法である「サプライ・カーブ」についてその概念等について取り上げた。さらに,大量生産によってコストが低下する可能性を検討する方法である「学習曲線」について取り上げ,太陽電池の学習曲線の例では,累積生産量が2倍になるにしたがってコストが82%に低下するなど,コストが高くて成り立たないと言われている技術が,政策誘導によって実用化されていく可能性を示した。また,経済性が明らかであると言われている電球型蛍光灯の普及について,その初期にあった技術的問題点を整理するとともに,その解決の状況とその後の普及の状況について取りまとめた。さらに,太陽熱温水器の普及の停滞についての検討,ハイブリッドカーの普及とその進化した形態のプラグイン・ハイブリッド車についての技術的な検討を示した。

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